認知症対策としての家族信託

私達の生活において、高齢化が進む日本では認知症は避けては通れない問題となっています。
そして、認知症の程度が進んでしまうと、法律行為が行えなくなってしまいます。
具体的に言うと、銀行などで預金がおろせなくなり、生命保険の解約ができなくなったり、自宅を売却したり、アパート経営では新規の入居者と契約できなくなるということです。
介護が必要になり、必要な資金が多くなるにも関わらず、認知症となった本人の財産には手を付けることができなくなる、ということになります。

そんなときのために注目されているのが家族信託です。
認知症となる前に(重要なことです)家族信託で自宅や金銭を信託しておくことにより、後日認知症となってしまった場合でも、介護費用を捻出することができます。

1,自宅を信託財産とした場合
認知症となり、自宅の管理を行えなくなった場合でも、家族信託により子供等に委託していれば、修繕やリフォームをすることができます。また、施設等に入居し、空き家となった場合には、介護費用の捻出のために売却することもできます。

2,アパート等の収益物件を信託財産とした場合
本来であれば新規の入居者との契約ができませんが、家族信託により子供等に委託していれば、委託者が賃貸借契約を結ぶことができます。また、この信託報酬を設定することにより、委託者は管理に対する報酬(雑所得)を得ることもできます。

3,金銭を信託財産とした場合
認知症になる以前に設定しておいたならば、認知症となり、介護費用や生活費が必要となった場合には、その金銭を充てることができます。

以上のように、認知症が発症する前、または進行する前の早い段階で家族信託を設定することにより、将来的な財産管理や介護費用の確保に役立てることができます。認知症は身近な存在となっているからこそ、早めの準備と対策をすることが重要です。また、ここに挙げた例は一部であり、契約内容を十分に考えることで、より柔軟な対策をすることもできます。状況に応じた適切な信託設定が行えるよう、税理士や司法書士、弁護士に相談してみるのがいいでしょう。